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コラム 2026.06.17

新潟県と空き家との関わり

コラム投稿26

 新潟県内の空き家は、ついに15万戸を超えた。総務省の最新調査(2023年度)によれば、県内の空き家数は15万5300戸、空き家率は15.30%で、全国平均を上回り全国28位に位置する。さらに見過ごせないのが、賃貸用や別荘などを除いた、長期間使われていない「放置空き家」の増加だ。この5年間で20%増加し、7万8000戸に達したという。人が住まなくなった家が、ただ朽ちていくケースが急増しているということだ。  


 一方で、新潟の住宅市場を見渡すと、いまだに「新築」への執着が根強い。新築一戸建てを建てることが人生のゴールであり、ある種のステータスだという価値観は、新潟に限らず日本全体に染み付いているが、新潟ではその傾向がとりわけ強いとも指摘される。空き家が増え続ける一方で、新築需要が衰えない。家を継ぐ人がいなくなった実家は放置され、その隣でまた新しい一戸建てが建つ。同じ街の中で「余る家」と「増える家」が同時に進行しているのが、いまの新潟の風景だ。このねじれこそが、新潟の住宅問題の本質ではないだろうか。


  なぜ中古住宅という選択肢が広がらないのか。理由の一つに、雪国特有の事情がある。新潟の住宅には高い耐雪性能や断熱性能が求められるが、古い中古住宅がその基準を満たしているか、買い手には判断がつきにくい。築数十年の家屋であれば、屋根の雪下ろしに耐えられる構造なのか、壁の内側で結露やカビが進んでいないか、見た目だけでは分からない不安が残る。リフォームでどこまで性能を引き上げられるのか、コストがどれくらいかかるのか、見えにくさが「それなら新築の方が安心」という選択につながっている可能性がある。さらに、空き家になってから年数が経つほど傷みは進み、いざ売却や活用を考えても解体費用の方が現実的になってしまうケースも少なくない。  


 地域差にも目を向けたい。新潟市では、繁華街を抱える中央区の空き家率が16.4%と、市内で突出して高い。一方、郊外の北区や南区は比較的低い水準にとどまる。新築住宅地が郊外に広がり、街の中心部が空洞化していくという、地方都市にありがちな構図が、新潟でもくっきりと現れている形だ。  


 行政も無策ではない。新潟市は「空き家活用推進事業」として、福祉活動や移住定住、住み替えなど目的別に複数の補助メニューを用意し、リフォーム費用の3分の1、最大100万円(耐震改修なら200万円)を補助する仕組みを設けている。新潟県も「空き家再生まちづくり支援事業」を通じて、市町村が行う空き家再生の取り組みを支援している。こうした制度は申請が予算の上限に達して早期に締め切られることもあり、関心を持つ住民が一定数いることもうかがえる。

 

 民間でも動きは出ている。中古住宅を購入してリフォームを施し再販する「買取再販」を手がける事業者や、物件探しからリノベーションまでをワンストップで提供する工務店が県内で増えてきた。なかには、女性建築士が手がける中古住宅専門のリノベーション店のように、これまでの「新築中心」の住宅会社とは異なる文脈で中古住宅に向き合う事業者も登場している。中古住宅とリノベーションを組み合わせる選択肢が広がれば、住まいの選び方そのものが多様化し、結果的に空き家問題の緩和にもつながるはずだ。 ただし、補助金や事業者の努力だけで「新築神話」を覆すのは簡単ではない。中古住宅の性能や安全性を可視化する仕組み、たとえば耐震診断や断熱性能の評価を購入前に簡単に確認できる体制が整えば、買い手の不安は和らぐだろう。雪国ならではの不安要素にこそ、対策の余地が大きく残っている。  


 人口減少が続く新潟で、空き家はこれからも増え続ける。問題は、その家々を「いつか取り壊す対象」として放置するのか、それとも「リノベーションして使い続ける資産」として再評価するのかという選択だ。新築一辺倒の価値観から一歩離れ、中古住宅という選択肢に正当な価値を与えること。それこそが、新潟の住宅問題を前に進める鍵になるのではないだろうか。  


 その第一歩は、案外身近なところにある。実家を相続したとき、すぐに「空き家のまま」にするのではなく、リノベーションして貸す、あるいは自分が住むという選択肢を一度検討してみること。そして住宅を選ぶ側も、新築だけでなく中古とリノベーションという組み合わせを当たり前の選択肢として比べてみること。一軒一軒の小さな判断の積み重ねが、いずれ新潟の街並みそのものを変えていくはずだ。


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